小島精一「獨占・カルテル・トラスト」の再読。
改造社經濟學全集七『經濟學特殊理論(下)』。1929年)


小島氏については、同じく改造社の「日本統制經濟全集」の第八巻の
『日滿統制經濟』(1933年)の著者として知られる。1919年に東京帝大
経済学部を卒業し、のち九州帝国大学の教員となっている。九州人なのか
どうかは不明。


マルクスが資本主義者の生産様式を超克する具体的なものとして、
積極的なものに協同組合、消極的なものに株式会社をあげていること
は、『資本』第三巻の「利子生み資本」の項に書かれている。
トラストの問題は株式会社の延長上の、ヒルファディング風でいえば
金融資本を中心とする財閥の問題になる。日本の転向左翼(現実派左翼、
新・革新官僚など)は、これを日本の社会主義の前段階として把握
しなおした。これが統制経済・修正資本主義、そして奥村宏氏の言葉で
いえば*1、法人資本主義の原型のようなものとしてあると、そういう指摘が
ある。そういうものが出来上がったのは偶然の所産(敗戦、G.H.Q.の強権に
よる、財閥解体・農地解放など)によるにせよ、設計図は戦争前からあった
ものである。(勿論、こういう意見には反論も多い)。
この意見になんらかの真実があるならば、ある時期から、このシステムには
その負の側面ばかりが目につくようになった。だから世の中は確実に資本主義化、
森嶋通夫さんの言葉でいえば*2、反シュムペーター革命の過程が出てきている。
サッチャリズムレーガノミックス以来である。

*1:『法人資本主義』=朝日文庫

*2:サッチャー時代のイギリス』=岩波新書