ちょっとこれを書いておこうか。何故書きたくなったのか、分からないんだが。
左翼を批判したいとかいうよりも、事態を明確にしたいということだ。
酒井三郎『昭和研究会』(中公文庫・1992年。もとはTBSブリタニカ・1979年)に
ついて、私はまだきちんと読み込んでいないのだが、しかしこの書物には衝撃的な
記述があって、p.246-247である。尾崎秀実は、昭和研究会日中戦争不拡大方針を
覆すような、煽動する主張をしていたという酒井氏の証言があること。これが実際に
コミンテルンからの指示があったのかどうかは判らぬのだが、尾崎はおそらく、
内乱・戦争から革命への方針を堅持したものだと思われるのだ。そのためには
日本の兵隊のみならず、中国人民の犠牲をも織り込み済みだということを示す。
すさまじいね。彼を批難するとかを超えているのだ。「戦前」の国際共産主義
とはこういう性質のものであって、これがかれの科学だろう(鉄の法則への
信奉)。私自身はついていけない。しかし彼らにはそれだけの覚悟があったという
ことである。これについては『共同研究・転向』の鶴見俊輔さんも尾崎については
そうは書かれていなかったと思う。違ったかな。あとで確かめたいが。米谷さんが
これに類することを『批評空間』の三木清稿紹介のときにお書きになっていたと
いう記憶がある(立ち読みしただけだからあまり憶えていない)。