ネタがないので、第17期竜王戦第一局。弱い私が言及するのは口幅ったいのだが。
森内竜王に対する渡辺六段の先手番。
http://www.ryuoh.jp/banmen.html(時限あり)
渡辺六段は羽生以来の大器といわれる*1。先手番では矢倉、後手番では横歩取りをとることが
多く、めちゃ、強い。とくに終盤が異常に。谷川将棋を目標とすることも関係するか。
最近では矢倉は序盤研究が進みすぎていて、ほとんど、横歩取りや角換わりと変わりないような
短期戦となっているところ(線)もあると思う。
だから渡辺さんの先手でそのまま組ませてしまってはそのまま押し切られるところが
たとえ森内さんでもあるだろうので、おそらく森内さんは振り飛車にするんじゃないかと
私(も)推測していたのだが、実戦では、やはり急戦矢倉(第16、18手目がそれ)。
しかし少々、無理攻めに近いかたち(第44手目の角切り)に見えたのだが(実際、5三に行った
銀がのちソッポになった)。
あえて「無理攻め」だとすると、そのまま相手のミスに乗じて押し切るか、適確に受けられて
(ここでの「受け」とは攻めを媒介とする受けであるが)、指し切れになるか、切れ筋を
避けて押さえ込みをかかるかになるのだが、実際はその押さえ込みを狙ったのだが(第52手目以降)、
渡辺さんの適確な受けと攻めがあって、切れ筋になってしまった。89手で渡辺六段の勝ち。大差。
ただし森内さんは第一局はあえて捨て局と捉えて、実験的なことをしてみたかったのかも
しれない。トッププロの本当の狙いなどは、我々にはなかなか察しがたい。
渡辺さんの対応(第60〜80手)から、いわゆる「プロの手筋」を学ぶことがこの一局の
醍醐味となる。一見俗手にみえるなかに蘊奥がある。
次回は11/4、5。


昨日は第35期新人王戦第二局もあって。
http://www.kansai-shogi.com/weblive/live1.htm(時限あり)
若手ホープの東の渡辺、西の山崎の、山崎のほう。カド番での第二局。
これは大局観の勝利なんだろうか。
相掛かり戦で、58手目に佐藤(紳)さんが飛車交換に出る。これは山崎さんが
誘っていたのかもしれない。先手の玉形がわるいので飛車交換は先手が悪いと
思いきやそんなことがなかったというのが58手目以降である。66手目なんてただで
銀をとられてひどいと思うのが素人眼でしかない。その後はストレートに山崎さんが
寄せる(87手目の4一角打でほとんど受けなし)。素人からすれば不思議な将棋(8六銀が実に
受けに効いている)。相掛かりとは、のちにひねり飛車になったり角換わりになったり矢倉に
落ち着いたりとちょっと面白くも思った。再評価されているんだろうか?。

*1:佐藤康光さんは『注釈 康光戦記』=浅川書房・2004年、で渡辺さんについて次のように述べている。「現代的な感じがします。盤上で余分なことを考えていないのではないですか。私たちの世代はずいぶん無駄なことも考えていましたから。(略)。若いころ私はずいぶん長考しました。それは目の前の将棋を勝つうえでは、ほとんど関係のないことなんです。でも、それがいまになって役立っていると思います。」=p.269。これの真意・適否についてともかく、そういうコメントあり。堀口一史座さんのような若い世代の「求道者」もいるらしいから、これを世代論とすることには私は反対だが。また、渡辺さんの大山研究の深さを前提とした上での佐藤さんの老婆心と理解すべし。