目に付いた文章の引用。
木村義雄―将棋一代 (人間の記録)

未知の人でも新聞、雑誌等に、従来の棋譜は載っているから、それによって研究のたよりはあり、
花田氏も無論その辺は、十分検討した上で、策戦を立てたにちがいないけれど、さて実戦に
当って見ると、棋譜は棋風の現れにはちがいないが、いわば決定の一面であって、棋風全面の
活現ではない、機に臨んで変化するから、平面的に立てた策戦が、立体化する時齟齬を来すのは、
むしろ当然といわねばならぬ。(木村義雄「将棋一代」。p.182)

次。「将棋世界」1998年10月号の村山聖追悼特集号から。高橋道雄九段の文章。
村山さんが、角換わりのスペシャリストの丸山忠久さんに対して星が良かったことに
ついて言及されていて、

角換わりの腰掛銀は、研究の将棋と言われている。(改行)しかし、個人的に思うのは、
平均手数が短く、仕掛け即終盤になってしまう可能性のあるこの戦形は、一手一手の
密度が非常に濃く、それだけしっかりとした読みが要求されるが為に、その者の力量が
そのまま反映し易いのではないか、という事だ。(p.58)