あれれ。なんで、そんなレヴェルの低いこと朝に書いたんだろうな。すでに文脈が分かんねえや。
昨日のつづきをする。テクスト・クリティックどころか、単なる引用にすぎなくなっているんだが。
でもツッコミどころがちょっと分かんないということもある。

第三章 辱職の罪
第四十条 司令官其の尽すべき所を尽さずして敵に降(くだ)り又は要塞を敵に
      委(まか)したるときは死刑に処す。
第四十一条 司令官野戦の時に在りて隊兵を率い敵に降りたるときは其の尽すべき所を尽し
       たる場合と雖も六月以下の禁錮に処す。
第四十二条 司令官敵前に於て其の尽すべき所を尽さずして隊兵を率い逃避したる
       ときは死刑に処す。
第四十三条 司令官軍隊を率い故なく守地若は配置の地に就かず又は其の地を離れたるときは
       左の区別に従て処断す。
一 敵前なるときは死刑に処す。
二 戦時、軍中又は戒厳地境なるときは五年以上の有期禁錮に処す。
三 其の他の場合なるときは三年以上の禁錮に処す。
第四十四条 司令官出兵を要求する権ある官憲より其の要求を受け故なく之に応ぜざる
       ときは二年以下の禁錮に処す。


第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、第四十九条、
       第五十一条及第五十三条乃至第五十五条の未遂罪は之を罰す。


辱職罪のなかの司令官に関するもの。やっぱ厳しい。第四十一条の「尽すべき所を尽したる場合と
雖も六月以下の禁錮に処す」とか、こわー。こういうなかでは一兵卒は更に環境として苛酷だ。
昨日、書き忘れていたが、「死刑に処す」という文のなかに「又は云々」というものがある。
「又は」というものがあるかぎり、減刑がありえるということだが、「死刑に処す」オンリー
であると、それしか選択肢がないわけだ。
ところで「尽すべき所を尽さずして」の基準はなになんだろうか。どういう客観的な指標が
あるのか。あるんだろうな。

第四十五条 将校部隊若は一部の兵員を率い又は之に属し輸送船舶に在りて敵の
       艦船に遭遇したる際其の尽すべき所を尽さずして其の船舶を退去
       したるときは死刑、無期若は十年以上の懲役又は禁錮に処す。
第四十六条 部下多衆共同して罪を犯すに当り鎮定の方法を尽さざる者は三年以下の
       禁錮に処す。


第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、第四十九条、
        第五十一条及第五十三条乃至第五十五条の未遂罪は之を罰す。


第四十五条も厳しい。やっぱ兵隊さんになるのには余程の覚悟がいるわ。


次から、下級兵士水準の規定。

第四十七条 哨兵故なく守地を離れたるときは左の区別に従て処断す。
一 敵前なるときは死刑に処す。
二 軍中又は戒厳地境なるときは三年以下の禁錮に処す。
三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す。
第四十八条 哨兵睡眠又は酩酊して其の職務を怠りたるときは左の区別に
       従て処断す。
一 敵前なるときは五年以下の禁錮に処す。
二 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す。
第四十九条 衛兵、控兵、巡察、斥候其の他警戒又は伝令の勤務に服する者故なく
       勤務の場所若は隊伍を離れたるとき又は到るべき場所に到らざるときは
       左の区別に従て処断す。
一 敵前なるときは死刑又は無期若は十年以上の禁錮に処す。
二 軍中又は戒厳地境なるときは二年以下の禁錮に処す。
三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す。
第五十条 故なく規則に依らずして哨兵を交代せしめ其の他哨令に違反したる
      者は左の区別に従て処断す。
一 敵前なるときは一年以上五年以下の禁錮に処す。
二 軍中又は戒厳地境なるときは三年以下の禁錮に処す。
三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す。
第五十一条 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて斥候、巡察又は偵察の勤務に服する者
       虚偽の報告を為したるときは七年以下の懲役に処す。
       戦時、軍中又は戒厳地境に在りて軍事に関する命令、通報又は報告の
       伝達を掌(つかさど)る者其の命令、通報若は報告を詐(いつは)り
       伝へ又は故なく之を伝達せざるときは又前項に同じ。

第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、第四十九条、
       第五十一条及第五十三条乃至第五十五条の未遂罪は之を罰す。


その他。これも「辱職」に分類されるわけだ。ふーむ。

第五十二条 軍事機密の図書、物件を保管する者危急の時に当り之を敵に委せざる方法を
       尽さざるときは五年以下の禁錮に処す。
第五十三条 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて兵器、弾薬、糧食、被服其の他軍用に
       供する物の運搬又は支給を掌る者故なく之を欠乏せしめたるときは一年以上
       十年以下の懲役に処す。
第五十四条 健康を害すべき飲食物を配給したる者は一年以上十年以下の懲役に処す。
       因(より)て*1人を死に致したる者は無期又は五年以上の懲役に処す。
第五十五条 従軍を免れ又は危険なる勤務を避くる目的を以て疾病を作為し、身体を毀傷し
       其の他詐偽の行為を為したる者は左の区別に従て処断す。
一 敵前なるときは五年以上の有期懲役に処す。
二 其の他の場合なるときは五年以下の懲役に処す。
第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、第四十九条、
       第五十一条及第五十三条乃至第五十五条の未遂罪は之を罰す。


第五十三条、第五十四条の「一年以上十年以下」という規定も厳しい。不作為でもだろう?。
第五十五条の「従軍を免れ」というのは、徴兵以前なのか以後なのか。以後なんだろうな。
でないとそれはまた別の違反(兵役法=1927年施行)だと思う。第五十二条は、軍機保護法
(1897年施行)違反にも問われるんだろうか。重罪になるんだろうか。

軍機保護法(明治三十二年七月十五日法律第百四号)


帝国議会の協賛を経たる軍機保護法を裁可し茲に之を公布せしむ。


軍機保護法
第一条 軍事上秘密の事項又は図書物件たることを知(り)て之を探知したる者は
     「重懲役」に処し其の情軽きも之は一等を減ず。
第二条 職務に因り軍事上秘密の事項又は図書物件を知得領有したる者其の秘密たる
     ことを知て他人に漏洩交付若は之を公示したるときは「有期徒刑」に処す。
第三条 偶然の原由に因り軍事上秘密の事項又は図書物件を知得領有したる者其の
     秘密たることを知て他人に伝説交付し若は之を公示したるときは「軽懲役」に
     処す。
第四条 許可を得ずして軍港要港防御港又は保塁砲台水雷衛所其の他国防の為建設
     したる諸般の防御営造物を測量模写撮影し又は其の状況を録取したる者は
     一月以上三年以下の「重禁錮」に処し又は二円以上三百円以下の罰金に処す。
     (改行)因て第一条の罪を犯したる者は重きに従て処断す。
第五条 許可を得ず又は詐偽の所為に因り許可を得て保塁砲台水雷衛所其の他国防の
     為建設したる諸般の防御営造物内に入るたる者前条の例に同じ。
第六条 本法に規定したる軽罪を犯さんとして未だ遂げざる者は「未遂犯罪」の例に
     照して処断す。
     (改行)第二条の罪を犯さんとして其の予備を為したる者は同条の刑に照し
     二等又は三等を減ず。
第七条 本法の罪を犯し因て財物を得たる者は其の財物を没収し既に費消したるときは
     其の価額を追徴す。
第八条 本法は刑法第二編「第二章第二節」外患に関する罪、陸軍刑法第二編第一章
     反乱の罪、海軍刑法第二編第一章反乱の罪に関する規定の効力を妨げず。


軍機保護法第八条は陸軍刑法第二編第三章ではなく第一章叛乱の罪と関係するらしい。ふーむ。
この「重懲役」「有期徒刑」「軽懲役」という規定には具体的な日数が書かれていないのだが、
専門用語なんだろうか?。
第四条に私は興味がある。拡大解釈だが、公共電波放送などで、ある市街を事細かに撮影した
映像を放映することは、間接的には、軍事情報を流すことにつながるんだろうか?とずっと
私は思っていた。
第七条。この追徴規定(損害賠償?)は、私法的なものか、公法的なものか。
第八条。「刑法第二編第二章第二節」と書いているのだが、これは誤植か。「外患に関する罪」は
第三章なのだが(刑法は1907年施行。1921に一部?改正)。この第三章は陸軍刑法(さきに引用
した)と重なるところが多い。

*1:その上で、という意味。