○2002年に羽生×佐藤康ダブル・タイトルマッチがあって、計10局戦って、5-5の指し分け。
タイトルもひとつづつの痛みわけ。ただし佐藤さんが羽生さんからタイトルを奪うのは
久方ぶりだった。
その10局のなかの、日付順で1st、4thだったかと思うが、それの佐藤さんの大局観に痺れた
ことがあった。つまり、勝つ将棋というよりも、どんな攻め合い・斬り合いになっても、
絶対に負けない形を中盤に作ってゆくという。その着々たる様をそのまま見逃してお付き合い
してしまったのは羽生さんらしからぬことだったが。
勝ちに行く将棋ではなく、どうあっても絶対に負けない形を作る将棋を「卑怯だ」などと
いうのは、極めて固定的な狭い将棋観を吐露している。しかしこういう大局観があるんだと
それを知ってちょっと驚いた。