近頃読んで面白かった本:
八木公生『天皇と日本の近代(上)(下)』(講談社現代新書・2001年)
原武史『<出雲>という思想』(講談社学術文庫・「1996」→2001/2003年)
岡野友彦『源氏と日本国王』(講談社現代新書・2003年)(これは元の構想
どおり「源氏長者」という題にして欲しかった)。


八木著は迫力ありましたわ。上巻は明治憲法大日本帝国憲法)、下巻は教育
勅語、それぞれの思想性を一字一句に拘って、テキストクリティークをなさって
るんですけど、基本的には、井上毅の思想性が中心となる。八木さんによると
明治憲法は五箇条の御誓文(金原注:幕末以来の諸闘争・諸紛争の一応の帰結
だけど)の延長としての御誓文であるという。「万世一系」というものの規定
性についての是非が難しいところだけど。ただ本当に井上毅は八木さんの言われる
ほどにリベラルなんだろうかという疑問もあり、それは原武史著にも関わる。
原武史著は国学の初学者にとってほんと参考になる書物だけど、国家神道(神道は
宗旨・宗教にあらずという)の形成過程をさぐるという目的をもっていて、そこが
難解なところでもある。岡野著は、村上源氏についての探究。姓、氏、家などの
種別、国号とはなにかなど、衆生の疑問に思うところへの学者のひとつの応答。


「幕末」と「明治」との連続性と断絶性。