陣中法度の近代版の陸軍刑法(新版・1908年)の第二編「罪」についてテキスト・クリティックを
していきたい(つづくかな・・・)。繁体字簡体字にする。片仮名表記を平仮名にする。濁点と
句点を入れる。「死刑」の文字、他を引用者は太字にして引用する。(三省堂「六法全書」・1932年)

第一章叛乱の罪
第二十五条 党を結び*1兵器を執り反乱を為したる者は左の区別に従て処断す。
一(号=引用者による) 首魁は死刑に処す。
二 謀議に参与し又は群集の指揮を為したる者は死刑、無期若(もしく)は
  五年以上の懲役又は禁錮に処し其の他諸般の職務に従事したる者は三年
  以上の有期の懲役又は禁錮に処す。
三 附和随行したる者は五年以下の懲役又は禁錮に処す。
第二十六条 反乱を為す目的を以て党を結び兵器、弾薬其の他軍用に供する物を劫掠したる者は
      前条の例に同じ。


第三十一条 前六条の未遂罪は之を罰す。
第三十二条 第二十五条乃至第三十条の罪の予備又は陰謀を為したる者は一年以上の有期の懲役
      又は禁錮に処す。
第三十三条 第二十五条又は第二十六条の罪の予備又は陰謀を為したる者未だ事を行はざる前
      自首したるときは其の刑を免除す。


懲役と禁錮は違うんだな。後で調べる。

次は反乱が明確に利敵行為と関連する場合の諸条

第二十七条 左に記載したる行為を為したる者は死刑に処す。
一 軍隊又は要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬其の他軍用に供する場所、建造物其の他の物を敵国に
  交付すること。
二 敵国の為に間諜を為し又は敵国の間諜を幇助すること。
三 軍事上の機密を敵国に漏泄すること。
四 敵国の為に嚮導*2を為し又は地理を指示すること。
五 敵国に降らしむ為司令官を強要すること。
六 敵国の為に俘虜を奪取し又は之を逃走せしむること。
第二十八条 敵国を利する為左に記載したる行為を為したる者は死刑に処す。
一 要塞、陣営、兵器、弾薬其の他軍用に供する場所、建造物其の他の物を損壊し又は使用
  すること能はざるに至らしむること。
二 水陸の通路、橋梁を損壊又は雍塞*3し又は其の他の方法を以て軍隊、艦船の往来の妨害を
  生ぜしむること。
三 司令官軍隊を率いて守地若は配置の地に就かず又は其の地を離るること。
四 隊兵を解散し又は其の潰走混乱を誘起し又は其の連絡集合を妨害すること。
五 兵器、弾薬、糧食、被服其の他軍用に供する物を欠乏せしむること。
六 命令、通報若は報告を詐り伝へ又は虚偽の命令、通報若は報告を為すこと。
七 造言飛語し又は敵前に於て叫呼喧噪すること。
第二十九条 前二条に記載したる以外の方法を以て敵国に軍事上の利益を与へ又は帝国の
      軍事上の利益を害したる者は死刑又は無期若は五年以上の懲役に処す。
第三十条 反乱者又は内乱者を利する為前三条に記載したる行為を為したる者は死刑
     又は無期若は三年以上の懲役又は禁錮に処す。

第三十一条 前六条の未遂罪は之を罰す。
第三十二条 第二十五条乃至第三十条の罪の予備又は陰謀を為したる者は一年以上の有期の懲役
      又は禁錮に処す。


第三十四条 本章の規定は戦時同盟国に対する行為に亦之を適用す。

*1:これは第一編総則の第一条の「本法は陸軍軍人にして罪を犯したる者に之を適用す」の軍人を対象とするもの。ただし第二条は「本法は陸軍軍人に非ずと雖も左に記載したる罪を犯したる者に之を適用す」とある。その記載したる罪については後程また詳解する。

*2:嚮導=先導すること。

*3:雍塞=ふさぎ、邪魔をするということだな。