升田―大山両氏共通に「駒の調和」ということを強調されている。別の言葉でいえば、
駒の有機的関連ということか。それが、かれらについての評として、一本の幹としての
将棋ということがいえるのか。とにかく手が切れない。また粘り強い。すべての駒が
関連し且つ躍動している。またそれはつまり大山さんの言葉でいえば味方の駒が敵に
ならないことでもある(「勝負のこころ」=PHP文庫)。
また中盤の形勢判断の問題として。
升田さんの「歩を金にする法」(小学館文庫)から。

勝負をするときになんでもかんでも、相手にウンと差をつけようとりきむのは
よろしくない。このりきみ方を、関西の人は「イチビル」という言葉で表現する。
子供がお調子にのって、はしゃぎまわる謂いである。(略)
いちびり屋は、相手を何手もリードしているときでも、ちょっと追い上げられ、
差をちぢめられた感じになると、動揺の度がはげしい。(p.40)

つまるところ私の弱いのは、序盤の油断(急戦への対処の)と、中盤のいちびり、
そして終盤の寄せ(収束)のvisionの欠落と、こりゃ、取り得がない(とほほ)。
しかしそこを直せばいいわけだ。
1971年の大山―升田名人戦(升田式石田流が登場した名人戦)を並べ直しているとき
上のこと(駒の調和、形勢判断の問題など)を強く感じた。


今、竜王戦第五局二日目。森内先生には、とにかく、悪役になってでも、ニュースターの
台頭を阻まねばならぬとも思う。新星というのはとにかくメディアも世論も無意識的に
応援してしまうものだから。折角、羽生さんから奪取したものなんだから、森内さんには
頑張って欲しい。